北高尾山稜

高尾→(タクシー)→八王子城址(北高尾山稜登山口)→天守閣→鞍部→富士見台→黒ドッケ→夕焼け小焼け→(バス)→高尾

出足が遅れたのが悪いんだが、のっけからタクシーで登山口へ移動となった。もう 10:00 過ぎだったもんなぁ。
気温は低めで都心で 27 度程度。おそらく高尾の時点で 24 度くらいだったろうと思う。登山口はひんやりとした空気に包まれており、一本南側の高尾山の主稜と比べ、静かでしっとりとしている。
沢沿いの、遊歩道として完璧に整備コースをすたすたと歩き始めたが、これは八王子城址へと進む道で 25 分のロス。とはいえ、小沢は美しく、このあたりを散策するだけでも気持ちは十分晴れやかになるだろう。


正しいコースは車止めがある舗装された車道を直進、つまり、八王子城址の入り口にある建物を左手に見て進めばよい。
のっけから直登気味の道が続く。左手に伸びる新道へ進み、旧道と合わさる地点が 8 合目か。軽くつづらを折ると 9 合目に社が現れ、なおも上へ進むとあっけなく天守閣跡に着く。
小学生の頃、母に連れられハイキングした記憶はあるのだが、うっそうとした自然林が美しかったことだけ漠然と覚えている程度で、こうして登りなおしてみても何も記憶がよみがえらない。


縦走路は南側の斜面にあるようだ。やや滑りやすい細道を下りると T 字路となり、右へ取って縦走を開始する。
この縦走路はヤマケイの本には「小コブが続いて煩わしく、疲れる」と表記がある。経験上、この手の本にこう書いてあると、それなりにきつい。ただ、山域から、高尾山等を歩くハイカーを戒めるために書かれているのだろうと、正直なめ腐っていたのだが、改めて等高線を見るとそれなりに詰まっていること分かった。最近、この程度の山だと二万五千図を持っていかない時も増えている。これは大きな反省材料だ。


さて、縦走路に戻るが、山腹を緩やかに巻いていくと切通に出る。
右手に下りる道は陣場街道への下山路。尾根通しに進む道が縦走路である。
しかし、その左手に尾根を巻いていく仕事路が伸びている。尾根筋を見上げ、五万図を確認すると富士見台の手前あたりの鞍部で合流しそうに見えた。そこで合流しなくても、小下沢林道へ垂れる尾根に乗れば、富士見台で合流できる。そう踏んで、左の仕事道をとることにした。
これが大間違いだった。


しばらくは踏み跡もしっかりしており、何の危険の無い道が続くが、いかんせん完全な水平道だ。やがて尾根が高くなり始める。顕著な沢を渡り、小尾根に乗るあたりで道がぼやけ始め、結構な斜面に踏み跡が続くのみとなってくる。
地形図を読もうにも、五万図では話にならない。針葉樹林帯で足場がしっかりしてそうな尾根を記憶しておき、危険箇所が出るまでは直進して、進退窮まりそうな気配があれば、その尾根まで戻って直進することを決める。
やがて雑木林になると下草が茂り、道自体も谷側に傾斜する箇所が出始める。
30 分近く直進したが、一向に道へは出ない。
雑木林が終わりヒノキの植林帯に入りほっとしたのもつかの間、今度は、ちょっとした岩場にトラロープがぶら下がっているところへ出た。
先が見えてれば気にならないが、万が一、行き止まりだとこの岩を登り返さなくてはならない。
トラロープの強度はありそうだが、岩自体が泥が固まったようなもので、ホールドをつかむとはげる箇所もある。
遭難どころか怪我すらしたくないので、諦めて戻る。
1 分戻ったところに植林帯と雑木林の切れ目に顕著な尾根があったことも幸いした。


とにかく糞暑い。じっとしていると、ブヨだか蚊だかアブだかよく分からないが、そのままぼさっと立っていると好き放題咬まれたり、吸われたり、刺されたりしそうな気配満点な妙な虫どもが群がってくる。休むに休めないのだ。
意を決して、尾根を直登する。
幸い尾根筋はかなりはっきりしており、山仕事で使われる道のようだ。歩きやすさは、踏まれているところとそうでないところとでは雲泥の差で、登山道ではないまでも、足場が崩れるような危険なところは少ない。
時々五万図を取り出して自分が取り付いているのはどの枝尾根なのかを探るが、目に見えて顕著でも五万図の縮尺では話にならない。いずれにせよ主稜線まで這い上がれば道があるのは確実なので、踏まれているところを選んで上を目指す。
二度ほど偽の稜線にだまされたが、最後は小下沢から登ってくる道に合わさり、程なく富士見台に出た。
時計を確認すると 40 分ほど、時間をロスした計算になった。
それよりも体力の消耗が激しい。虫除けスプレーを出して、大休止することとした。


高尾あたりの里山ですら、その気になればいくらでも遭難できる。今回は登り基調なので無理も利いたが、下りでこれをやるのは当面は遠慮したいと思った*1
とにかく二万五千図を持ってこなかったことは痛かった。これは結局、最後まで影響し続けることとなった。


富士見台で大休止した時点ですでに水を 1.5 リットルくらい使ってしまっている。多少多めに 3 リットル持ってきてはいるのだが、その余裕から、歩き出し早々に頭が暑くなり上からかぶったりしていたのがでかい。
ようやく道に戻って安心したのもつかの間、これからは前述した「小コブが続く」エリアに入る。
俺の中で「小コブ」と呼べるのは、高柄山のように 20 〜 30m のものなのだが、ここの小コブはスケールがでかい。
40 〜 60m 級の小ピークと呼んだほうがいいようなものばかりなのだ。
事実、小コブひとつひとつには名前がついていたりする。
概ねコースは直登となっており、這い上がると、30 〜 40m 直降してみたりする。二万五千図ならばスケールも場合によっては斜度も細かく分かるのだが、五万図ではピークを読み違えたりもする。


夕焼け小焼けへの分岐がある黒ドッケの、ひとつ手前のコブを黒ドッケと勘違いしたところで、陣場山までの縦走は諦めるべきだと判断した。現在の時間は 14:00。陣場高原下のバス停に降りる頃には 18:00 近くになりそうだったのもひとつ。水も少なくなってきたのもひとつ。そして何より、気持ちが折れたのだ。
黒ドッケの上で昼食のグレープフルーツにかぶりつく。すっかりぬるくなってしまっていた。
後は薄暗い林の中の滑りやすい道を降りて、夕焼け小焼けに降りた。温泉に入りたかったのだが、15:30 頃のバスを逃したくなかったので汗だくのまま高尾へ。派手に疲れた一日だった。

*1:お坊山から南東へ伸びる尾根の最後でハマって難儀した経験あり