忘れたくても忘れられないであろう今晩の出来事

それでも敢えて書き残そうと思う。


永遠のおわりと、永遠のはじまり。
その狭間で、祖母の優しさと愛情に包み込まれるようにして育てられてきた日々を思い返してみた。
そのどれもほろ苦く、そしてぬくもりに満ちている。


いずれ、ごく近い将来、祖母の時間は停止し、彼女の永遠がはじまってしまう。
そして、そのまた将来、俺の DNA を持つ子らは、永遠に思えた日常におわりがあることを知り、俺の時間は停止し、永遠がはじまることになるのだ。


これは、人類生誕以来、脈々と、受け継がれてきた。そして、受け継がれていく。
おそらく、それを解決する手立ては生まれまい。


十五夜お月さんは、小さいころに、祖母がよく歌ってくれた歌だった。
朧月は、春の季語なんだそうだ。肺水腫で呼吸が苦しかった彼女が、まだ自宅療養できていた一昨昨日、苦しい息の中、優しい声で教えてくれた。


まだ、もうちょっと、祖母ちゃん孝行させてくれ。
こんなんじゃぜんぜん足りてないんです。
俺を包んでくれたあのぬくもりを、俺はいつ、誰に返せばいいって言うんだ。祖母ちゃん、教えてくれ。